「まるでスターウォーズ」LEDのついたドローンが疾走する姿をまるでスターウォーズの世界!と形容され、世界的に流行しだしたきっかけとなったのが、この動画です。
2014年の9月に公開されたこの動画は再生回数300万回を超えています。草レースとしてはじまったこのドローンレースがわずか1,2年で世界戦がおこなわれるようなイベントになるとは当時はだれも想像していなかったでしょう。
「ドローン」って何?
そもそものドローンについてまずは簡単に説明しておきましょう。
「ブーン、ブーン」と飛び回る蜂。そんな羽音からちなんで名付けられたという説もあるのがドローンですが、元は軍用の遠隔操作兵器として20世紀から使用されていた古い歴史があります。日本国内の航空法では、「無人航空機」という名称でドローンの事が明記されていますが、海外では、「UAV」や「UAS」と呼ばれることも多く、またドローンレースの世界では「drone」と使われることが多いです。ちなみに、より機体の特徴を細分化する場合は、4枚羽のドローンを「クアッドコプター(quadcopter)」、6枚羽のドローンを「ヘキサコプター(hexcopter)」といいます。「my quad」のように呼ぶ人も中にはいます。
FPVドローンレースとは
農薬のタンクを積んで散布するドローンや、人間が行けないところを撮影する空撮ドローン、建設現場などで多く使われている測量用ドローンなどドローンの種類は様々ですが、これらは1kg〜10kgの機体重量があるドローンを指すことが多いです。ドローンレースで利用するドローンは、およそ200g〜600g程度の機体重量であり、片手で持てる程度の大きさであることがほとんど。しかし、最高速度は150km/hを超えるものも出てきています。(2016年8月時点)
そのスピードによって、近年世界的なブームとなっているのが、「FPV Drone Racing」です。FPVとは「First Person View(一人称視点)」の略で、要はドローンに取り付けたカメラの映像をリアルタイムにパイロットが見ることで操縦することを指します。ドローンレースは、そのままですが、ドローンを操縦して他の機体にスピードで勝つことを目的としたレースです。実際には、3人から8人などの複数パイロットが頭に装着したFPV用のゴーグルに映し出されるドローンの視点の映像をリアルタイムに見ながら、コースを操縦し、タイムアタックやトーナメントを行うことが多いです。
ドバイ世界大会の賞金は1億円!?

ドバイで行われたドローンレースでは15歳少年が優勝
2016年2月にドバイでドローンレースの世界大会が開催されたことは国内のTVにも取り上げられ大きな注目を集めましたが、なんと優勝したのは、若干15歳の少年。世界各国から集まり日本からも複数人のパイロットが参加した同レースは、豪華絢爛なコースレイアウトで観る人を魅了させる演出を施していました。賞金総額はなんと1億円で、上述の優勝チームには3000万円近い金額が与えられたといいます。FPVドローンレースが世界で始まり人気が出だしたのが2014年ごろですが、わずか1年ちょっとで世界大会を開催し、かつ莫大な賞金を出すコンペティションなどこれまでの歴史であったでしょうか?
トップパイロットの多くはラジコンヘリなどの経験を持つ人が多いものの、ドローンを初めてわずか1,2年の世界であり、10代のパイロットが上位入賞しているのも面白いところです。まだまだ黎明期で、機体性能の向上や利用しているソフトウェアの改善も日々行われているFPVドローンレースは参入障壁が低く、誰でも参加できるの特徴です。
日本国内でのドローンレースの始まり
世界で人気となったFPVドローンレースですが、日本国内では少し変わった形でドローンレースが開催されていました。先に説明した、FPV用ゴーグルは装着せずに、自身の目でドローンの姿勢や向きを見ながら操縦を行うものであり、「目視ドローンレース」と呼ばれています。
ドローン視点の映像をゴーグルに飛ばすためには、無線電波を用いますが、日本国内では、この無線電波の利用周波数帯に制限があるため、誰でも許可無く使うことができないことが目視ドローンレースが先に開催されていた大きな要因です。私が初めて生でドローンレースを見たのも、この目視ドローンレースであり、Parrot社のAr Drone2.0とHitec社のEYE One Xtremeというドローンを用いて行われていました。小さなドローンを体育館の中で飛ばし、スピードを競うレースを目にして、これは流行りそうだなと思った記憶があります。
スピードレースだけでなく、障害物レースなどがその後国内でも開催されていましたが、世界で人気となっていたFPVドローンレースが初めて日本国内で開催されたのが2015年10月の「Drone Impact Challenge」であり、国内のTVでも放映される大会となりました。
以下は、2016年7月までに開催された国内ドローンレースの一覧です。
開催時期 | レース名 | 主催 | 開催場所 |
---|---|---|---|
2014/6/28 | 第1回全日本クアッドコプター選手権 | Engadget Japanese | 秋葉原 |
2014/11/24 | 第2回全日本クアッドコプター選手権 | Engadget Japanese | 秋葉原 |
2015/1/25 | 第一回Japan Drone Championship | JDRA | 秋葉原 |
2015/4/5 | 第二回Japan Drone Championship | JDRA | 秋葉原 |
2015/5/30 | 第3回全日本クアッドコプター選手権 | Engadget Japanese | 秋葉原 |
2015/8/1 | DJI EXPOドローンレース | DJI Japan/JDRA | 新潟 |
2015/9/6 | Catalyst ドローンレース 2015 Tokyo | Catalyst | 秋葉原 |
2015/11/7 | Drone Impact Challenge 2015 | Drone Impact Challenge | 千葉 |
2015/12/5,6 | DRONE AIR RACE | JDRA | 千葉 |
2016/2/14 | World Prix in Dubai 日本選考会 | Aerial Grand Prix Japan | 慶応義塾大学SFC |
2016/3/26 | Drone Impact Challenge 2016 | Drone Impact Challenge | 幕張メッセ |
2016/5/23-27 | D1 ASIA CUP 日本予選 | JDRA | 千葉 |
2016/6/11,12 | JAPAN DRONE NATIONALS | JDRA | 仙台 |
2016/7/2,3 | DRONE Racing in KOBE | カイトコーポレーション | 兵庫 |
2016/7/29,30 | Drone Impact Challenge 2016 ASIA CUP | Drone Impact Challenge | 秋田 |
2016/8/6,7 | Maker Faire Tokyo 2016 FPVドローンレース | FPV RACING JAPAN | 千葉 |
FPVドローンレースの基本ルール
国内外で多くのFPVドローンレースが開催され、ルールについてはおよその方向性が定まってきましたが、ドローン周辺の技術革新などと相まって明確なレギュレーション基準がないのが現状。ここでは一般的な例として、2016年8月に開催された韓国釜山でのレースを参考に、ルールや実際によく使われる機体タイプやレギュレーション例をあげたいと思います。
◯利用するドローンやゴーグル
・フレームの大きさ:210サイズ
・プロペラサイズ:5インチ、3枚羽
・バッテリー:リポバッテリー4S(セル)
・モーター回転数:2500KV前後
・ESC:30A
・操縦用にCCDカメラ搭載
・映像記録用にアクションカム搭載
・映像無線送信機(VTX)・アンテナは事前貸出
・ゴーグル:解像度800×600など
・グラウンドステーション(映像無線電波受信機)完備
多少の差異はあれど、参加していたトップパイロットの多くがこのようなセットアップに近いかたちでレースに参加していました。つまり、機体性能の差というよりも操縦テクニックやレース本番で力を発揮するパイロットが勝利を手にしていたのです。
◯コースレイアウト
・ゲート、フラッグ、高低差のある地面を利用したテクニカルコース
・反時計周り(左回り)を4周
・1周20秒前後で完走するのに1分30秒
・安全対策のためコース周辺はネットで防御
スピードを出した状態だと2分を超えて走行することはやや難しいため、3周から4周のコース周回が多く、距離にすると500m前後のコースが多いです。
◯スケジュールやレース運営
・レース本番前にコースの下見、2,3回の練習走行が設けられる
・ピットエリアとドローンのスタート地点は別
・スタートの合図を元に同時飛行を開始し早くゴールした人が勝ち
・墜落した場合は失格、または飛行距離を元に順位付け
・トーナメント方式、または複数回タイムアタック方式
・上位3名には賞金、あるいは商品が授与
・安全な位置に観客席を設ける
練習走行があるとはいえ、初めてのコースであるため、いかに早く初見のコースに順応し、いつもどおりの走りが出せるかが勝負。ドローンの映像送信に使われる電波はアナログ無線電波を使っていることもあり、電波の干渉が起きやすく、レース中、または前後にトラブルになることが非常に多いです。
トーナメント方式の場合は、一回のミスや電波トラブルなどで失格となってしまったらすぐに敗退となってしまうが、タイムアタック方式の場合は複数回チャレンジができる点、レースの開催趣旨などによってトーナメント方式となるかタイムアタック方式となるかは変わってきます。
2016年6月に日本国内で開催された最大規模のFPVドローンレース「Japan Drone Nationals」では、観客動員数が1700名近くに上ったということですが、会場のキャパシティや集客によって、今後それらを上回るレースもどんどん開催されていくでしょう。
興味がある方は、ぜひレース用ドローンを作り始めてみては?