ドローンレース機だけではなく、Phantomのような小型の空撮機から大型のものまで、多くのドローンにリポバッテリーが利用されていますが、初心者の内は、どのようにリポバッテリーを管理して利用するか、また充電したり、ちょっとの間使わないからと放電したりという基本的な扱い方もわからないことが普通です。
私自身も、色んなサイトで発火の動画や「リポバッテリーはとても怖いぞ!」なんて脅すものだから、最初は鍋の中にいれていたこともあったくらいです…。
今回は、私自身の経験だけではなく、「Tattu」や「Gens」のバッテリーで有名なバッテリーメーカーである、gensace担当者に直接お聞きした内容をベースにいくつかリポバッテリーのメンテナンスの仕方などを解説したいと思います。
リポバッテリーの保管方法とは
私は、充電が完了した「問題のない」バッテリーを頑丈なアルミケースに入れて補完、持ち運びしています。ちょっとやそっとの衝撃で凹むようなケースではありません。入りきらないものは専用のリポ袋にいれています。
リチウム系の電池は強力な電力を供給するように設計されています。これらのバッテリーに含まれる化学物質は外部からの衝撃を受けたり、端子がショートするなどすると発火する危険性があります。そのため、ショートしないような工夫はもちろん、耐衝撃性ももった上で保管しておくのがベターです。
Gens担当者もアルミニウムのようなケースに入れるのはとても望ましいと話しておりましたが、専用のリポ袋などでも問題はないです。ただし紙袋など破れてしまうような素材の場合は、端子が短絡してしまう可能性があり、発火の危険性も高くなってしまいますので注意が必要です。
リポの保管時の電圧はどうするべきか?
使用しないリポの保管時はフル充電ではなく、3.8VくらいまでDischarge(放電)した上で、保管しておくことが良いと言われます。これらの理由についても、Gens担当者に直接確認しました。
Q. 保管時はどのような電圧で保管するべきか?またなぜなのか?
フル充電の状態で放置しておくことは、良くない。高い電圧状態は、セル内の科学反応を起こしやすく、膨張などにつながる。そのため、3.8Vまで放電して保管しておくことをおすすめしている。ただし、保管時の気温も考えておく必要がある。暑い場所においておくと、より科学反応が起きやすく、1−2週間で膨張しはじめてしまう。寒い所だと、熱い所よりは膨張しはじめるまでの期間は長くなるはずだ。23度前後であれば3.8Vの状態で保管しておくのが望ましいだろう。
ただし、3.8Vがベストだと考えている理由は、過放電を考慮しているからである。我々は3.5Vなどまで放電して保管することがあるが、自然放電により少しずつ放電されるため、保管したまま忘れたりすると、過放電をおこし、バッテリーが使えなくなってしまうのだ。
正しいリポバッテリーの充電方法とは?
充電モードは間違いなくLiPoモードにすること
ニッカド水素やLiFeなどバッテリーにも種類があります。多くの多機能な充電機には、それらの充電モードを選ぶことが可能ですが、絶対に間違えて選択しないようにしましょう。異なる電圧で充電してしまうため、場合によっては発火する可能性もあります。必ず「Lipo」を選択して充電を行いましょう。
リポ(LiPo)バッテリーは1セル当たりの電圧基準が3.7Vです。3セル(3S or 3 Cellsと表記されることが多い)であれば、1つのバッテリーの中に3つのセルがあるので3掛けて、1つのバッテリーで12.1V、4Sなら16.8Vです。LiFeやニッカドなどこれらの値が異なります。基準となる電圧が異なるので、異なるタイプのバッテリーを一緒くたに充電はできない、という風に理解すると覚えやすいでしょう。
放電レート・充電レートとは?
ドローンに利用するリポバッテリーには、「Discharge Rate (C)」があります。日本語訳では放電率、と言われますが、瞬間的に出力できる電気の量と理解するのがよいでしょう。スピードを求めるレース用ドローンの多くは60C〜95Cなど高いC値のバッテリーが多いです。
この放電率に対して、「Max Charge Rate (C)・充電率」もバッテリーメーカーや販売元によっては提示されていることがありますが、これは充電するときにどの程度まで大きな量を充電できるかを指します。具体的な例は以下です。
・1300mAh 4S(16.8V)のリポバッテリー
・放電率は65C
・充電率は10C
・1C=1300mAh、1.3A
・10充電率で10.3Aまでの充電が可能
高い充電率で充電すれば早く充電完了します。高い電流を流し込むので当然ですね。
しかし、ここで気になるのは、大きなアンペアで充電すると、早く充電できる代わりにバッテリーが傷んでしまうのではないか?ということです。ドローンレース業界でも、「どのアンペアで充電するべきか」は意見がわかれるところで、トップパイロットの中には、レース用に使うリポバッテリーは0.3Aずつ充電する、という人もいます。どのような充電の仕方が理想的なのか、Gens担当者に伺いました。
Q. どの程度の充電率で充電するのが良いか?
1以下の充電率でリポバッテリーを充電することをおすすめする。高い充電率で充電した場合、バッテリーには良くない影響を与える。時間がある時なのであれば、1C以下の充電をするのが良い。また容量が大きい場合はより低い充電率で充電する方が良い。
Q.感覚的にはわかるが、なぜ高い充電率が良くないのか?
まず、私達は良いバッテリーか否かを確認するために、「バッテリーの電圧の違い」チェックする。たとえ同じロットで生産されたバッテリーでもセルごとに異なる電圧値を持ってしまう場合がある。そのため、バッテリー生産時には、「battery cell matching」という工程が存在する。
バッテリーのセルバランスが同じ時は、とても安定して飛行ができるのがわかると思うが、バランスが崩れれば崩れるほど不安定になり、発火の危険性が出てくる。
バッテリーチャージャーはバッテリーの充電が満タンになった場合に、「チャージ完了」とするが、高い充電率で大きな電流を流して充電する場合、実際には正しく充電が完了できていない場合がある。高い充電率で大量の電流を充電することは、バケツに勢い良く水をいれることで水がこぼれ落ちるようなものだ。ゆっくり水を入れればほとんどこぼれない。
上記から、電圧差を生みにくくするためにも、小さな充電率で充電するのが望ましいということです。私もこれを機に、4,5C充電などスピードを優先したチャージは卒業します!
重要なのはバッテリーセル間の電圧差
つまり、この「セルバランス間の電圧の違い」がバッテリーを充電する上での肝と言えそうです。バッテリーチャージャーの多くは「バランス充電」とありますが、基本的には同じ電圧に揃えるように充電しますが、セル間で電圧の差異が出てしまうことは良くあります。
例えば、4Sのリポバッテリーの各セルごとの電圧例です。
4S:4.20V 4.19V 4.18V 4.19V
4S:3.70V 3.65V 3.72V 3.72V
では、具体的にどこまで電圧差が出た場合に、「バランスが崩れているのでマズイ」と判断するのがよいのでしょうか?
Q.セルごとのバランスがどの程度で崩れていると判断すれば良いですか?
電圧差が出ている場合は、チャージャーの機能にある「バランスチャージ」で0.5C充電など小さい放電率で充電する方がいいでしょう。やや厳しい基準だと30mV(0.03V)の差異が出ている場合はバランス調整をする必要があります。もしもバランス充電をした後でも、バランス差が縮まらないなら、そのリポバッテリーは廃棄※1するべきでしょう。
0.03Vとは、私がしょっちゅう見ている電圧差…。なんか悪いことしていたようです…。と、この基準はメーカーが消費者に提示できるラインなのだと思います。実際には60mAを基準に見て、バランス差が縮まらない等がある場合は、利用をやめることが望ましいようです。
※1:リポバッテリーの廃棄について
リポバッテリーの廃棄はバケツなどに水を張って軽く塩を入れて1日〜2日つけておき、ゴミ捨て場のルールにしたがって廃棄しましょう。そのまま捨ててしまうと発火の危険性があるため、必ず水漬けにしてから廃棄します。
リポバッテリーの購入と日本国内への配送
リポバッテリーは上述のように発火の危険性があるため、航空機などでは危険物に該当します。そして、2016年4月1日にリチウム電池の空輸に関する国際規則が改訂されました。これは以前よりもリチウム電池の空輸に対する制限が厳しくなり、リポバッテリー(リチウムポリマーバッテリー)も同様です。
これを受けて、多くの小売・通販業者でバッテリーの調達が難しくなっているのが2016年の現状です。船便などを利用して調達しているところもありますが、多くの時間を要することもあります。海外での購入ももちろん可能ですが、個数制限がある場合がありえます。
購入する場合に配送自体ができないことや、個数制限がかかりうることを予め理解しておきましょう。
なお、海外や国内を航空機で移動する際のリポポバッテリーの持ち込みについては下記を確認してみてください。
ドローンレース用のおすすめバッテリー
今回gensace社の担当者に直接伺うことにした一番の理由の一つが、これまで利用したバッテリーで最も品質が高いと感じたことにあります。レース用のドローンだけではなく、大型のドローンでも頻繁に利用されている同社のバッテリーはホビー業界のみならず産業界にも人気があります。
そのような同社の中でもドローンレース用にぴったりな、2016年9月のイチ押しバッテリーはなんといっても、「R-LINE」です。Tattu R-Line 1550mAh 95C 4S1P lipo battery pack
こちらには、1300mAhのバッテリーもありどちらも95C(Burst180C)というモンスター級のパワーを出すことができます。強力なパワーがむらなく一定にでるこのバッテリーはレースには当分必須になりそうです。近々、日本国内でも購入が可能になりますので、その際にはまたこちらでアナウンスします。
そこまで放電率(C)が高くなくてもいいので良いバッテリーはないか?という方はこちらを御覧ください。
リポバッテリーについて、何か疑問点や不明点があれば、下記でコメントください。
くれぐれも、リポバッテリーでファイヤーすることのないように!!
こんにちは。
アマゾンにてトイドローンを買って庭で飛ばしていましたが、風で飛ばされ行方不明になってしまいまいた。
バッテリーの発火のことを知って、とても動揺しています。
HollyStone社のHS+160というミニドローンです。
すみません、どうしたらいいのかわかりません。
アドバイスを頂けたら嬉しいです。
大丈夫だと思いますよ。
雨や朝露でバッテリー自体がだめになってしまうと思うので発火の可能性はとても少ないと思います。
ただ、、、早く見つかるといいですね!
お返事ありがとうございます。
YOKOTAさんの返信を見て、少し落ち着きました。
明日また探してみます。
リポバッテリーは、前の日に、充電しておくなわだめなのでしょうか
全然いいんじゃないですか!?当日朝に充電しなくちゃいけない!とかどんだけ時間に余裕ある人なんですかね^^
いつもレースドローンのパーツチョイス情報参考にさせてもらっています。
今モーターとESCの組合せで苦労しています。
症状としてモーターがカタカタいい回らない、うんともすんとも言わないなど、半年ほど前まではこういう事少なかったのですが、、、何かやり方がまずいのかといろいろと試していますが、いかんせん出口がみえません。
◇今手元のモーターはEMAX2205、Racstar1805、
◇ESCはFlycolor30A
◇FCはCC3Dです。
Oneshotの恩恵も必要なく、BLHeli設定もいじらないような初級者です、Openpilotデフォルト設定のポン付けで動くような(?)おすすめESCはありますでしょうか?
無茶質問失礼します、よろしくお願いします。
モーターとesc、どちらかが壊れているのだと思います。症状からはescですね。該当のモータのescを回っているescと交換して一度切り分けてみてください。
使い続けていると消耗することはあります。
escはflycolorもいいですご、littlebeeのescは安定している印象ですね。価格も高すぎないので良いかと思います。
その他なにかあればご質問ください。
ありがとうございます、littlebeeを購入してみます。
いつもESCは予備を見て購入してるので、余計に不良在庫が増えています。笑
早く安定したESCに出会い、大量買しておきたいです。。。
リポバッテリーの保管時(1週間〜1ヶ月程度)、満充電は良くないと聞くことがありますが。最近のリポはひと昔前のものより性能が良くなり問題ないとの意見を耳にします。比較するのはおかしいかもしれませんが、確かにiphoneなどは常に満充電でも問題ないと感じています。ドローン用の3〜4Sリポの場合はどうなんでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
性能が良くなったとは言え、フル充電は良くないです。3.8Vなどにして保管しましょう。
上記の記事内に、詳細記載しましたので、あわせて確認してみてください。
リポの例えば「3S」というのは、3個直列(serial)という意味ですね。(Sはセルではありません)
リポのラベルやスペックに書かれることが多いのは「3S」あるいは「3Cell」と書きましたが、表現おかしいですかね。。ありがとうございます。